【イベント議事録9/9】聖徳学園中学・高等学校 品田 健 先生「授業設計、同期型・非同期型の組み合わせ」

2021年8月28日に開催されたオンラインイベント「iPadで臨時休校を乗り切るための環境整備と授業デザイン」のアーカイブ記事、全9編中の9本目です。
本記事はiOSコンソーシアムの代表理事の野本竜哉が執筆している本サイトのオリジナル記事です。本記事の著作権はiOSコンソーシアムに帰属します。

目次はこちらのページを参照
https://giga.ios.or.jp/hint/202108monthly_conf_reference/

品田先生


▲聖徳学園中学・高等学校の品田と申します。私からは授業設計の話をしたいと思います。できるだけ平易にお話ししたいと思います。

 


▲本校は中1から高校3年まで一人一台のiPadとApple Pencilを使って学習をしています。2学期は8月25日からスタートしていますが(編注:本イベントは8月28日に開催)、すでにオンライン授業をしています。しばらくそれが続く前提で対応しています。

 


▲さて、オンライン授業デザインの大前提として「生徒が安心する授業であるか」を大事にしています。先生が安心するための授業になっていないか?という疑問が実はあります。

 


▲生徒の顔が見えないと不安だから全員ビデオオンで授業をしていないか。いつもと同じ授業にしたいからと50分のオンライン中継になっていないか、板書や指導案をいつも通りの授業をしていないか。また、いつもの授業を録画したものをみるだけのオンライン授業になっていないだろうか。

 


▲これらを想定している方も多いかもしれませんが、これって生徒にとって安心できるのか?

 


▲みんなが教室にいる、それと同じ授業をオンライン授業でやるのは経験上「不可能」。そう考えないと、先生たちも生徒たちも負担が増すばかりで、辛いだけ。極端な例えをすれば、プールの水泳の授業を教室でやろうとしているようなもの。

今回のセミナーも大きな会場でやっていたらそんなに疲れていないはず。でも今皆さん、相当疲れているのではないでしょうか?
(編注:この品田先生の登壇パートはイベントの一番最後)
今日はお好きな環境から参加しているとしても、音が大きかったり、音が途切れたり、といったいろんなストレスが積み重なっていくこともあるのでは?これを学校の授業に置き換えたらどうでしょうか?

 


▲特に「ハイフレックス型」の授業はお勧めしません。その場に生徒がいて、一部がオンラインで授業を受けるハイフレックス型の授業を、両方に目配せして一人でその対応をするのは極めて困難。うまくつながらなかった生徒や、音声が聞こえないという生徒がいる中で授業をするのはかなり困難。事実上、複数のスタッフが必要でしょう。

しかし、一生懸命やっても、対面の子はオンラインの子に注力していると不安になるし、オンラインの生徒は対面の子と盛り上がっていると置いていかれているような感覚になってしまう。よってこの形式はかなり危うい。

 


▲そこで、今回は「同期型(オンライン・リアルタイム)」と「非同期型(オンデマンド)」を組みあわせる授業設計がお勧めです。

 


▲最初はZoomとの同期型で出欠や今日の流れを確認します。最初はここで授業支援システムなどを使って案内をすることが考えられます。次に、生徒たちは各自で動画を見てもらう(URLは最初の同期型で示す)。
その後、問題を解いたり、作業を生徒が各自で行っています。授業はリアルタイムで進んでいるのですが、あくまで生徒たちはここの作業をしています。Zoomは開いたままにしておき、適宜質疑応答をできるようにしておくのがよいので部分的に同期型を使っています。

最後に時間を指定して、この時間になったらZoomに戻ってきてもらい、解説やまとめは同期型で行うパターンもあります。ただ、ここも非同期型を使うケースもあるでしょう。最後の確認テスト(出欠を兼ねる)は授業の中でやってもいいですが、今日の●時までに入力してください、という具合に課題提出をしてもらうようなこともありでしょう。

 


▲Zoomの最初の同期型の部分は先生も生徒も安心ですし、出欠が確認できます。ただ、接続不良の生徒の発生やビデオオンにできない家庭事情を考慮する必要があります。(必ずビデオオンにしてください、はお勧めしません)

 


▲次の動画については、繰り替し見られたり、接続不良があっても見直せる、欠席のフォローがしやすいです。説明解説の動画についても同様です。ただ、先生たちの動画作成の手間がかかることや、生徒の反応がわかりにくいというデメリットがあるかもしれません。

 


▲ただ、動画を撮影するときには、言い間違いをわざわざ撮り直すような先生がかなりいます。ここをこだわってしまうと、ものすごく時間がかかってしまいます。できれば一発撮りをしないと、正直続かないです。一発撮りをお勧めします。

 


▲さらに、質問は都度Zoom対応については、生徒はビデオオンにしなくてもよいし、邪魔が入りにくく自分のペースで進められるという声があります。生徒によっては質問しにくかったり集中しにくかったりという声があるようですが・・・。

 


▲解説やまとめは、できれば先生が戻ってきて、同期型をうまく活用して出欠確認をすると良いでしょう。課題の提出を通じて理解度も確認できます。

 


▲本校の場合は、長くとも動画は10分までを目安にしましょう、という案内をしています。また、生徒や先生と繋がれるような課題を用意してあげることが安心感を演出できるはずです。また、非同期型は接続できなくても大丈夫という安心感があることも重要です。
最も大事なのは、生徒と先生が疲れないようにしないと、続きません。

 


▲全部完璧にやろうというわけではありません。まずはできることからスタートしましょう。

初めての取り組みで失敗はつきものです。でも理由をつけて挑戦しない学校や先生に生徒や保護者は批判をします。下手でも生徒を思って挑戦をする学校や先生に生徒や保護者は感謝してくれます。また、昨年もあったように、システムの問題が起こることもあります。「全員がいつもよりちょっとだけ優しくなろう」という言葉を大事にしていきましょう。

できることから、みんなでチャレンジを許しあいましょう。

 

(連載記事終了)