【Apple教育イベント2026 Room C レポート】ゼロタッチ・宣言型デバイス管理・OneRoster ― GIGA第2期を支えるAppleデバイス管理の最前線

Apple Education Event 2026 / Room C:管理と運用 レポート
ゼロタッチ、宣言型デバイス管理、OneRoster ―― GIGA第2期を支える、Appleデバイス管理の最前線
Apple 教育イベントのブレイクアウト「Room C」は、教育機関の情報部門・調達担当者にとって密度の高いセッションだった。会場にはAppleスタッフに加えて世界中の教育機関で Apple デバイス管理を支える Jamf Japan の青野氏、内田洋行の学習eポータル「L-Gate」を担当する森下氏も登壇し、Apple製品の管理運用に関する最新の情報が共有された。
2026年5月13日 14:00–15:00 / 有明セントラルタワー Room C
“箱を開けてつなぐだけ”が当たり前になった ―― ゼロタッチ導入
セッションは、Apple デバイスのゼロタッチ導入の現在地から始まった。iPad、Mac、Apple TV ともに、箱から出して通電してネットに接続するだけで、Apple School Manager(ASM)と MDM を通じて自動的に管理対象として登録される。「IT 担当者が一台ずつ触ってキッティングする」という、ここ10年の風景は、いよいよ過去のものになる。
ゼロタッチは「ユーザー主導のセットアップ」を前提としている。低学年など現場の事情で代理セットアップは現実的な選択肢として残るが、原則は“受け取った先生・生徒が自分で初期設定を進める”という設計だ。それでも初期設定のスキップ項目は OS のアップデートに応じて毎年変化するため、「年に一度の見直し」が運用上の必須項目になることが強調された。
宣言型デバイス管理(DDM)と eSIM ―― 旧プロトコルからの移行
技術的な目玉のひとつは、いよいよ本格化する「宣言型デバイス管理(DDM)」への移行である。従来の MDM はサーバが指示を出し続けるポーリング型だったが、宣言型ではデバイス側が自分の状態を能動的に通知する。大規模運用での負荷とスケーラビリティが劇的に改善するため、旧プロトコルは今年から段階的に一部使用不可となる予定であることもアナウンスされた。
また、ソフトウェアアップデートを「日時を指定して強制適用する」運用が、宣言型 MDM では可能になる。授業時間に勝手に再起動が走る、保管庫の端末がうまく更新できない――という現場の悩みに対して、クリーンな解が出てきた格好だ。Safari の細かな制御(ブックマーク配布、ホームページ指定、プライベートブラウジング制限、履歴削除制御)も、宣言型対応の MDM 側で一段と充実している。
通信設定の自動化も話題になった。セットアップ時のキャリアアクティベーションで eSIM 設定を自動実行できるため、Wi-Fi + Cellular モデルの初期配備の手間が大幅に減る。「自治体規模のロールアウト」をかなり現実的に視野に入れた進化である。

Jamf Japan 青野氏より、JAMF Pro による Mac/iPad の遠隔一括配布と運用のデモが行われた。
SSO とプラットフォーム SSO ―― “サインインの形”が変わる
認証まわりも、ここ1年で一気に整理された。iPad・Mac ともに SSO 対応が進み、とくに Mac の「プラットフォーム SSO」は、既存の IdP アカウントでそのまま macOS にサインインできる仕組みだ。ローカルユーザーとの併存も可能で、学校ごとの運用ポリシーに柔軟に合わせられる。
管理対象 Apple Account(旧称:管理対象Apple ID)は、200GB の iCloud ストレージが標準で付与され、ほとんどの Apple サービスがそのまま利用できる。ASM 側の宣言設定で、個人用 Apple Account のサインインを明確に制限できる点も、教育委員会・学校設置者にとっては安心材料となるはずだ。
OneRoster / L-Gate ―― 名簿運用の“自動化”が見えてきた
もうひとつのキーワードが OneRoster(Japan Profile)だ。役割(教師/生徒)とクラスを CSV で一括作成・更新できるようになったことに加え、SFTP による定期更新で、人事や学籍の情報をそのまま反映していくことが可能になっている。内田洋行が展開する学習eポータル製品「L-Gate」を組み合わせれば、毎日定時の自動入出力までフローとして組める。「年度初め・年度末の名簿地獄」が“仕組みで吸収できる”時代が来たと言える。
ASM 自体も Google Workspace/Microsoft Entra ID とのフェデレーション接続に対応しており、初回サインインで自動的にアカウントが作成される。ディレクトリ同期で事前一括作成も可能だが、デフォルト役割は「生徒」となるため、教師権限の付与だけは ASM 側で補正する必要がある――といった現場で躓きやすい落とし穴も、内田洋行の森下氏から具体的に共有された。

内田洋行 森下氏が示した、ASM と OneRoster(Japan Profile)の連携。役割(教師/生徒)の一括作成・更新がフローとして示された。
Apple と Jamf で組む、教育現場のセキュリティ運用
セキュリティの話題では、macOS 標準の XProtect/MRT/Gatekeeper/ファイアウォールを基盤にJamf のセキュリティ製品群(Jamf Protect・Jamf Safe Internet)を組み合わせる構成が紹介された。Jamf は、可視化・監視・ポリシー適用を一元管理し、Apple のアップデートにも迅速に追従する。ゼロトラストが求められる校務端末から GIGA 端末まで、それぞれの用途に応じたセキュリティ運用を Jamf を使って対応できる。
調達担当者へ ―― “いま選んだ製品”は2〜3年後も生き残るのか
ゼロタッチ、宣言型、OneRoster、SSO、ASM、Jamf Protect ――今回 Room C で示された運用基盤は、「あとから差し替える」ことが難しい類のものだ。特に今回、名簿連携の充実でより容易になった「教職員向け端末」については、別記事でも紹介しているようなローカルAIという新たな可能性や、足元での情報端末の「メモリ価格高騰」という逆風なども加味する必要があり、難しい調達を迫られる。ただ間違いなく言えるのは “いま選ぶ製品が、5年先も学校現場支えられるケイパビリティを持っているか”を冷静に見極める必要があることではないだろうか。
「ゼロタッチも、宣言型も、OneRoster も。教育機関におけるAppleデバイスの管理運用は大きく改善した。校務Macのような教職員向け端末の選択肢も増えていく中、調達側の冷静な目利きが問われている。」
— Apple 教育イベント 2026 Room C 取材より
(2026年5月/Apple 教育イベント 2026 Room C 取材レポート)





